『殺戮姫』終了に寄せて

週刊チャンピオンに短期連載中であった『殺戮姫』が先週終わった。『私は加護女』の後作品だったこともあって読んでたんだけど、ちょっと気になったことがあったので書いておく。それはもう最初っから短期連載にするつもりでしか書いてないようなプロットにある。「普段はある特定の人物を慕う弱い、しかし一度危機が訪れると人を傷つけることになんのためらいもなくなってしまう主人公」この関係が出てしまえば僕でも思いつく展開としては「危機が訪れても人を傷つけない展開」「特定の人物と主人公とが仲たがいしてしまう展開」が考えられたが(手塚治虫の『魔神ガロン』なんかが典型的)、全四話中既に二話がこの系統であったということだ。そのうちの一話は三週連続だったため六回連載中四回がいわゆるベタベタな展開になっていると言える。そしてベタベタと言うならば最後の回でやたらと「ベタ」という言葉が使われることもまた注意を要する。このマンガのベタさの詰め込みかたは何なのか。ベタな展開とはベタな脱線、ベタな設定をした時点でベタな脱線もまた決められていたのではないか。そしてそれは「設定/設定からの脱線」、「人であることを認識していることを迂回して/人をためらいもなく傷つけることができる」(←これは顔という一種の超越がアノミーにより意味をなさなくなったことから人を傷つけることがためらいもなくできる、という小難しい議論もできるが、このマンガでは人を傷つける役割でない主人公が徹底的に傷つけられ、かつそれにあわせる形で悪役の独白が始まることでその切り替えを行っている)「話中の登場人物にベタについて言及させる/話自体がベタな話」という三つのメタベタ(ベタなメタ/ベタのメタ)/ベタを同時進行させ、そのメタなベタをベタで隠すように話を突っ切ったところがある。だからものすごい話が急速に終わった印象を持つ。プロットの練りこみ不足と最初は思ったんだけど、この重ね方を見ると短期連載であったがゆえにちょっと意図的にそうしたのかな?と思う。